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「どうぞ」と「どうか」
2016-11-14 Mon 22:40
相手に何かを頼む時に、私たちはこんな風に言います。

どうぞよろしくお願いします。」
どうかよろしくお願いします。」

さて、皆さん。この「どうぞ」と「どうか」、どのように使い分けていますか。

お願いの度合いの違いでしょうか。
それとも、丁寧さの違いでしょうか。

「う~ん・・・」と考え込んでしまった方は、次の例を見て、考えてみて
ください。

(例1)スーパーの試食販売で店員が客に呼びかける場合
    A)「どうぞ召し上がってみてください」
    B)「どうか召し上がってみてください。」

(例2)退社時間間際に、明日の午前中に必要な書類作成をお願いする場合
    A)「どうぞお願いします。」
    B)「どうかお願いします。」

いかがですか。
(例1)ではB)の方に、(例2)ではA)の方に不自然さを感じたのでは
ないでしょうか。

「どうぞ」と「どうか」。
両方とも、単なる「お願いします」と言う時より、お願いの度合いや丁寧さを
高める表現です。
しかし、お願いする時の状況によって、使い分けがあります。

「どうか」は、困難なことは分かっているが、そこをどうにか、という場合に
使います。

つまり、話し手が「どうか」を使うのは、困難な状況を承知の上で懸命に頼む、
懇願する時です。

一方、「どうぞ」には「困難な状況」というものがありません。単に、相手に
対して、自分の希望を丁寧に依頼する時
に使います。

ですから、(例1)のように、試食販売という場面では、普通「困難な状況」
は想定できませんから、「どうか」ではなく、「どうぞ」の方を自然だと感じ
ます。(その商品を試食するのに20分ぐらいかかるので、客が嫌がって
誰も試食してくれず、困っているという場面なら、「どうか」を使っても不自然
ではありませんが・・・)

また、(例2)の場合は、「退社時間間際に、相手に無茶なお願いをする」と
いう困難な状況ですから、「どうか」がベストです。反対に、こんな場面で
「どうぞお願いします」なんて言われたら、依頼された方は頭にきますよね。

「どうぞ」と「どうか」。
似ている言葉ですが、場面や自分の心情に合わせて使い分けたいもの
です。

そして、お願いを受ける側になった時も、依頼主がどちらを使ってお願い
してくるかで、その人のおかれた状況や今の心情を読み取れるように
なりたいものです。


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責任逃れしたいときは、自動詞を使う?!
2016-10-31 Mon 23:19
先週のブログで、日本人はなぜ「お茶を入れました(他動詞)」ではなく、
「お茶が入りました(自動詞)」と言うのか・・について書きました。
→詳しくはこちら。「お茶が入りました」と「お茶を入れました」

今日も、この「自動詞」と「他動詞」について紹介したいと思います。

先週、日本人は「動作主である自分を言い立てないことを良しとする」価値観
を持っているので、「(私は)お茶を入れました(他動詞)」ではなく、
「お茶が入りました(自動詞)」を使うことで、自分を隠す、ということを
紹介しました。

こう説明すると、自動詞を使って表現することは、謙虚さを表す良い表現の
ように感じますね。
しかし、この「自動詞を使った表現」は使う状況によっては、責任逃れの表現
になってしまいます。

例えば、こんな場面に遭遇したことはありませんか?

子ども:(ガチャーン。コップをテーブルから落として)
    「ママ~!ママ~!コップが壊れたよ~。」
お母さん:「壊れたじゃないでしょ!!!壊したんでしょ!!」

「壊れた」という自動詞を使うことで、結果の方に視点をおき、
「壊した」自分を隠す
という、自動詞の特長を上手く(?)使った言い方です。
もちろん、子どもは「壊れた」と「壊した」の違いを知って、使い分けている
のではないと思いますが、もし、これが大人の会話であれば、「コップが
壊れたよ」なんて言ったら、相手に「責任逃れ」と思われても仕方ありません。

「自動詞」を使って、「謙虚さ、控えめさ」のニュアンスを添えるか、
「責任逃れ」をするか。
その時の自分の心情で日本人は無意識に使い分けているようです。


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「お茶が入りました」と「お茶を入れました」
2016-10-25 Tue 21:29
どういうわけか、記事が思うように投稿できず、
一日遅れの「日本人が知らない日本語の仕組み」の更新です。

いよいよ秋も深まり、朝夕肌寒さをおぼえるようになりました。
こんな季節は温かいお茶でも飲みたくなりますね。

さて、皆さん。
そんな時、皆さんは、
「お茶が入りましたよ」
「お茶を入れましたよ」
 

のどちらで他の人たちに声をかけますか。

「お茶が入りましたよ」と言う方が多いのではないでしょうか。

しかし、この文。よく考えると、不思議な文でもあります。
「お茶は自分で茶碗の中に入る」ことはありませんから・・・。

でも、私たち日本人は、「お茶が入りました」という言い方に何ら違和感を
覚えません

むしろ、「お茶を入れましたよ」と言われた方が、妙な感じを抱くかも
しれません。

では、どうして「お茶が入りました」が間違った表現にならないのでしょうか。

この「入る」という動詞は「自動詞」です。
自動詞と言うと、「自らが動く動詞」と思われるかもしれませんが、
日本語の自動詞には「変化の結果を表す」という働きがあります。

例えば、
「私はドアを開けました(他動詞)。」
  →→(その結果)「ドアが開きました(自動詞)。」というように。

ですから、この「お茶が入りました」という表現も、
「私がお茶を入れた(他動詞)
  →→その結果「お茶が入った(自動詞)
という意味であり、決して、お茶が自ら動いて茶碗の中に移動したという
意味ではないのです。

では、どうして「(私は)お茶を入れました」より、「お茶が入りました」
という結果を表す表現の方が好まれるのでしょうか。

実は、日本人は「動作主である自分を言い立てないことを良しとする」価値観
を持っている
と言われています。
それが言葉の面でも表れています。
一番分かりやすいのが、「今度、田中さんと結婚することになりました」
という挨拶でしょうか。
結婚すると決めたのはもちろん自分ですが、「~になりました」という表現を
使うことで、自分を隠しています。

これと同じように、「お茶が入りました」という表現も「~が入る」という
自動詞を使うことで、結果の方に視点をおき、お茶を入れた自分を隠している

のです。
つまり、「お茶を入れたのは自分だ」ということを言い立てない価値観にあった表現なのです。

「お茶が入りました」

特に意識もせず使っている表現ですが、この中に詰まった日本人の価値観を
感じながら、お茶を入れ、誰かに声をかけてみてはいかがでしょうか。

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辞書から分かる日本語の語彙の特長
2016-10-17 Mon 18:26
読書の秋ですね。
皆さんはどんな本を読んでいますか?

「本」と言って良いのかは「?」マークのつくところですが、今日は
「辞書を読む」ことでわかる「日本人の知らない日本語の仕組み」を
ご紹介したいと思います。

皆さんのお手元にある国語辞書は、言葉の意味や使い方を知りたい、
確認したいときに使われることが多いかと思います。
しかし、ちょっと見方を変えると、日本語の特長が分かる面白い書籍です。

では、どう見るのかというと「日本語は何行の言葉の数が多いのか」という
視点です。

辞書の側面(辞書を引くときに見る背表紙の反対側です)を見てください。
行ごとに灰色などで色を付けて分類されていると思います。

そうすると、あることに気づきます。

それは、
「日本語はア行からサ行までの言葉のページが多い
ということと、
ヤ行以下の言葉のページは少ない
ということです。

ちなみに、私の手元にある明鏡国語辞典は、語彙の総ページ1784ページの
963ページまで、つまり全体の半分以上が「ア行~サ行」の言葉で占められて
います

一方、ヤ行以下の語彙のページはたった137ページ。全体の約8%です。

更に、面白いのは、「ヤ行~ワ行」のなかでもラ行の語彙は漢語と外来語
ばかりで、和語はほとんどありません

つまり、昔の日本語は「ラ行の音で始まる語彙はほとんどなかった」ということが分かります。

辞書もこういった見方をすると、日本語の特長が分かる面白い「読み物」に
なります。

秋の夜長。
皆さんのお手元にある辞書を「読んで」みてはいかがでしょうか。


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「~うちで」と「~なかで」
2016-10-03 Mon 23:18
「私は果物のうちで、マンゴーが好きです。」
と言われたとき、違和感を覚える方は多いのではないでしょうか。

日本人であれば、
「私は果物のなかで、マンゴーが好きです。」
と言う人がほとんどかと思います。

この「~うちで」と「~なかで」
日本語教育では、ほとんどの初級のテキストで「~なかで」が出てきますので、
外国人も「~なかで」をよく使います。
その後、中級以上のレベルで、「~うちで」を学習するのですが、これが出て
くると「~うちで」と「~なかで」の使い方の混乱が起きるのです。

どちらも範囲を表す時に使う言葉ですが、最初の「果物のうちで、マンゴーが
好きです。」より、「果物のなかで、マンゴーが好きです。」と言った方が自然
だと感じるということは、日本人は「~うちで」と「~なかで」を使い分けて
いる
ようです。

では、どう使い分けているか・・・というと、
ある時間や期間、数量の範囲を表す時は「~うちで」
それ以外は「~なかで」
というルールがあります。

例えば、
「1日のうちで、一番渋滞するのは午前8時ごろです。」
「1年のうちで、8月が一番暑いです。」
「300人のうちで、次の審査に進めるのは5人だけです。」
「スポーツのなかで、サッカーが一番好きです。」
「このカタログに載っている物のなかで、何が一番欲しいですか。」
というように。

初級で「~なかで」を学習する外国人は、「~うちで」というところを
「~なかで」と言ってしまう傾向がありますが、最近は日本人でも
「~うちで」ではなく、何でも「~なかで」で済ませてしまう傾向もある
ようです。

ですが、ある時に、「ん?何か変だぞ」と感じるその感覚を大切にし、
使い分けできるようになりたいものですね。
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「ら抜き言葉」は理由があります。
2016-09-26 Mon 22:45
先週、ニュースや新聞で文化庁の「国語に関する世論調査」が発表され、
「ら抜き言葉」をつかう人が初めて多数派になったと報道されました。

「ら抜き言葉」。
見れる、食べれる、寝れる・・などの「れ」の前の「ら」が脱落した言い方
です。
一時期、日本語の乱れの象徴として叩かれましたが、今ではアナウンサーも
原稿を離れたトークなどの場面では話していますし、画面に出るテロップも
「見れる」となっていることがあります。
(私も、「辛い物は食べられない」と言った時に、「食べられない?どこの
方言?」と真面目な顔で日本人に質問されたことがあります・・・。)

実は、この「ら抜き言葉」
日本語教師の間では、「理由のある現象」として捉えられています。
(なんていうと、「ら抜き言葉、絶対認めない!」と言っている先生方に
怒られそうですが・・。)

今日は、どうして「ら抜き言葉は理由のある現象」として捉えられているかを
お話したいと思います。

「食べられる」

これだけを聞いて、皆さんは「可能表現」か、「尊敬表現」かの区別が
つきますか?
 

私は「これだけでは、どちらか分かりません」という答えです。

そうなのです。
この「~られる」という言い方は、可能表現と尊敬表現の両方で使われる厄介な
もの
なのです。
特に、会話で主語を省略する傾向のある日本語は、「食べられる」だけで
話すこともあるので、外国人にとっては、「可能?尊敬?」と混乱を招く原因
となっています。

また、この「ら抜き言葉」は「上一段活用」と「下一段活用」の動詞と「来る」
の可能表現だけに表れる現象
です。
動詞の多くを占める「五段活用」の可能表現は、「書ける」、「読める」、
「話せる」のように、「らを入れない」のです。
要するに、動詞の多数は「ら」を入れずに可能を表すのに、ある限られた動詞
のみ「らを入れなければならない」というイレギュラー
が生じているのです。
(日本人はこれをイレギュラーと考えないかもしれませんが、日本語を外からの
視点で見ている外国人は「ら有り言葉=イレギュラー」と捉えています)

まとめると、

①「見られる」、「食べられる」のように「ら有り(?)言葉」では、
  可能表現か、尊敬表現かの区別がつかないので、
  その区別を付けるために可能表現の時に「ら」の脱落が起きている

②動詞の大部分を占める「五段活用」の可能表現のルール同様、「上/下一段
  活用」、「来る」も「ら」をつけない変化をさせた結果
が「ら抜き言葉」

ということが言えます。

こう考えると、この「ら抜き言葉」も、それなりの理由がある現象だと言える
のではないでしょうか。

「ら抜き言葉」は、現在「日本語の揺れ」として扱われているので、日本語の
テキストにも「ら有り言葉」が載っています。
(最近は、「ら」が脱落することがあることを説明しているテキストもあり
ます)
ですから、私たち日本語教師も「ら有り言葉」を教えますが、「ら抜き言葉」が
多数派になったという調査結果を受け、「ら抜き言葉」が認められる日も遠くは
ないと感じます。

「食べれる」は可能表現、「食べられる」は尊敬表現と「ら」の有無で分かる
ようになれば、日本語を勉強する外国人は「分かりやすい!」と思うのでは
ないかと感じています。
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